面接で、応募者が緊張して声が震えている。顔が赤くなり、言葉に詰まり、用意してきた答えを読み上げるような話し方になる。そうした場面に出会ったとき、「この人はコミュニケーションが苦手なのかもしれない」と感じることがあるかもしれません。
この記事では、企業や自治体で面接を担当される方に向けて、緊張している応募者をどう受け止め、どうすれば具体的な話を聞けるのかについて、私の考えを一つの視点としてお伝えします。
緊張してうまく話せないことは、コミュニケーションの力がないことなのか
緊張してうまく話せないことと、コミュニケーションの力がないことは、同じではないと思っています。緊張は、本番に向けて体が準備を整えたときの自然な反応です。そして、その緊張の中から一言、二言を引き出すことも、面接官の役割の一つです。
私は大学で学生に就職活動の講座を担当する一方で、企業や官公庁で、採用の進め方や合否を判断する基準づくりにも関わっています。その両方の立場にいると、面接で緊張してうまく話せなかったことで、力のある人がこぼれ落ちてしまう場面が、機会損失のように見えることがあります。
そもそも、面接で見たい「コミュニケーションの力」とは何か
「コミュニケーション」という言葉は、会社や組織によって中身が違います。私は学生さんに、募集の要項に出てくる「コミュニケーション」「チャレンジ」のような抽象的な言葉は、その会社がどういう意味で使っているかを読み取ってください、と伝えています。同じことは、面接をする側にも言えるのかもしれません。
社会に出てから評価されるコミュニケーションの力は、うまく話す力も魅力的ではありますが、真摯に向き合い、相手の話を一生懸命に聞く姿勢も魅力的だと思います。話をよく聞ける人は、周りから助けてもらいやすくなります。仲間と成果を出していく場面では、一人で何でもこなせる人より、周りの協力を得られる人が任される、ということも少なくありません。
明るさやハキハキした話し方は、目に見えやすい表面の部分です。それだけでコミュニケーション力の判断をしなくてもよいのではないか、と思っています。実際に、私が関わっている企業でも、人見知りの方が面接やグループディスカッションを通過しています。自分にできる範囲で真摯に人と向き合った方たちです。
なぜ、面接になると応募者は緊張するのか
学生さん側から見た緊張については、別の記事(面接で緊張してしまう学生さんへ)で書きました。ここでは、面接をする側の方に知っておいていただけたらと思うことを、短くまとめます。
| 応募者に起きていること | その背景 |
|---|---|
| 心臓がドキドキする | ふだんと違う出来事にすぐ対応できるよう、身体が用意を整えている状態。私は講座で「セット完了」の状態と呼んでいます |
| 顔が赤くなる | それだけ気持ちを込めて、その場に来ているということでもあります |
| 答えが棒読みになる | 「当てられて話す」「目上の人がいる」「改まった場」の3つがそろうと、人は子どもの頃の教室での音読と同じ状態になりやすい。面接は、この3つが全部そろう場です |
棒読みになってしまうのは、話す力が足りないからというより、場の形がそうさせている面が大きいと考えています。
海外の心理学の研究では、緊張による身体の高ぶりが、それだけで成果を下げるわけではないことも示されています。ブルックスさん(2014年)は、人前で話すなどの課題の前に、不安を落ち着かせようとした人たちよりも、その高ぶりを「ワクワクしている」と捉え直した人たちの方が、成果がよかったと報告しています。この捉え直しは、「今私はワクワクしている」と声に出すような、短い言葉やメッセージだけで起きたようです。また、ジェイミソンさんたち(2010年)も、試験の前に「身体の高ぶりは成績を助けることがある」と伝えられた人たちの方が、何も伝えられなかった人たちより点数が高かったと報告しています。
この研究から考えると、面接の場で「緊張しなくて大丈夫ですよ」と落ち着かせる配慮で使った言葉よりも、「緊張されているのは、それだけ真剣に考えてくださっているからですよね」と、緊張をそのまま受け止める一言にも意味がありそうな気がします。これは研究そのものではなく、研究から私が考えた一つの視点です。
緊張していても、すでに見えていることがある
会社説明会での聞き方
面接の前にも、応募者と接する場面はあります。会社説明会で話している側からは、参加者の聞く態度がよく見えています。うなずきながら、メモを取りながら、少し前のめりで聞いている人は、それだけで人に向き合う姿勢を見せてくれています。
説明会でよく聞いていて、面接では真っ赤になって緊張している人は、それだけその会社が好きなのかもしれない、という見方もできます。そうした人は、緊張しやすい人ではあっても、コミュニケーションの力がない人とは限らないのではないでしょうか。
深く聞くのは、話の上手さで判断しないため
面接で深く質問するのは、応募者を追い詰めるためではなく、その人が本当に何を考え、どう動いてきたのかを理解するためだと私は考えています。言いかえれば、話が上手な人だけを優秀だと見誤らないために、深く聞くのだと思います。
そう考えると、緊張している応募者こそ、深く聞く意味があるのかもしれません。最初の答えがうまくまとまっていなくても、問いを重ねる中で、その人の考え方や動き方が少しずつ見えてくることがあるからです。
緊張の中から、具体的な話を聞くために
ここからは、緊張している応募者から具体的な話を聞くための見方を、私が面接官トレーニングでお話ししていることや、学生さんに伝えていることをもとに、一つの視点としてご紹介します。どれも正解というわけではなく、面接官の方それぞれのやり方の中で、合うところがあれば、という程度のものです。
考える時間は、こちらから渡せる
応募者が言葉に詰まったとき、面接官が黙って待っていると、応募者の側は「早く答えなければ」と焦り、自分の中で怖さを大きくしてしまうことがあります。とくにオンラインの面接では、その沈黙が長く感じられます。
「待ちますので大丈夫です」「まとまってからで結構です」といった一言があると、応募者は考える時間をもらえたと受け取れます。面接の初めに、「正解を探す質問ではないので、思うことを自由にお話しください」と伝えておく、という形もあると思います。
大きな問いを、小さな場面に分ける
「学生時代に力を入れたことは何ですか」のような大きな問いは、緊張しているときほど答えにくいものです。一方で、「その中で、いちばん困ったのはどんな場面でしたか」「そのとき、最初に何をしましたか」のように、場面と行動に分けて聞くと、答えやすくなることがあります。
私は学生さんに、経験を場面ごとに切り分けて考えると、その人らしさが見えやすくなると伝えています。人の個性は、何をしたかよりも、その場面で何を考え、なぜそう動いたかに表れるからです。面接で聞きたいのも、多くの場合、そこではないかと思います。
受け取ったことを、言葉にして返す
深く聞いているとき、面接官の集中した表情は、応募者には厳しく見えることがあります。答えを受け取ったときに「よく分かりました」「ここをお聞きしたかったんです。ありがとうございます」と言葉にして返すと、応募者は少し安心できるようです。
それでも答えに困っているときは、「お話の内容は、こういうことを大切にされている、ということでしょうか。これは私の解釈ですが」と、こちらの理解を一つの仮説として返す、という方法もあります。応募者は自分の言葉が届いていると感じられますし、面接官の側も、受け取った内容を確かめられます。
深く聞いても圧迫にしない工夫については、面接で深く聞いても圧迫にしない3つでも書いています。
面接官は、応募者にとって未来の上司でもある
面接官の方は、応募者が入社すれば、一緒に働く先輩や上司になるかもしれない人です。緊張している人から一言、二言を引き出す関わり方は、入社後に部下や後輩の力を引き出す関わり方と、どこかでつながっているように私は感じています。
逆に言えば、緊張してうまく話せないことだけで判断する面接は、入社後のマネジメントのあり方にも、同じ見方が表れてしまうのかもしれません。面接は、組織が人とどう向き合うかが、応募者に最初に伝わる場でもあるのだと思います。
私は学生向けの講座で、緊張してうまく話せなくても通過することはある、と伝えています。企業や自治体の面接官の方々にも、緊張の向こう側を見ていただけたら、という願いを込めて、この記事を書きました。
よくある質問
緊張している応募者と、準備不足の応募者は、どう見分ければよいですか
はっきり見分ける方法は、私にもありません。ただ、一つの視点として、場面を小さく分けて具体的な行動を聞いていくと、違いが見えてくることがあります。言葉に詰まっていても、場面や行動を一つずつ聞いていくと、経験の中身が出てくることがあるからです。
緊張に配慮しすぎると、評価が甘くならないでしょうか
配慮することと、評価の基準を下げることは、別のことだと見ることもできます。見たい力の基準はそのままに、その力を確かめるための聞き方を整える、という考え方もあるのではないでしょうか。深く聞く力は落とさず、深く話してもらえる関係を整える、というのが私の考えです。
面接官どうしで、緊張している応募者の見方がそろいません
面接官それぞれに経験と見方があるので、そろわないのは自然なことだと思います。そのうえで、「この面接で、何を確かめたいのか」を面接官どうしで言葉にしておくと、緊張と力を分けて見やすくなる、という見方もあります。面接官の方どうしで目線を合わせる場づくりは、私が企業や官公庁でお手伝いしている仕事の一つでもあります(企業・官公庁の皆さまへのご案内)。
まとめ――緊張の向こう側にいる人を見る
緊張してうまく話せないことと、コミュニケーションの力がないことは、同じではありません。社会で評価されるコミュニケーションの力は、うまく話す力だけではなく、人の話を聞き、人と向き合う姿勢もそれだと思います。
そして、緊張の中から一言、二言を引き出すことも、面接官の役割の一つだと思っています。考える時間を渡す、問いを小さな場面に分ける、受け取ったことを言葉にして返す。ここでご紹介したのは、そのための一つの視点にすぎません。答えのある話ではないからこそ、面接官の方それぞれの向き合い方の中に、応募者の力が見えてくる瞬間があるのだと思います。
緊張して顔を赤くしながら、それでも面接の場に来てくれた人の中には、まだ言葉になっていない力がある。そう信じて向き合ってくださる面接官の方が一人でも増えたら、とてもうれしく思います。
出典
- Brooks, A. W. (2014). Get excited: Reappraising pre-performance anxiety as excitement. Journal of Experimental Psychology: General, 143(3), 1144–1158. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/24364682/
- Jamieson, J. P., Mendes, W. B., Blackstock, E., & Schmader, T. (2010). Turning the knots in your stomach into bows: Reappraising arousal improves performance on the GRE. Journal of Experimental Social Psychology, 46(1), 208–212. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/20161454/
