「面接になると、頭が真っ白になってしまう」「声が震えて、顔が赤くなるのが恥ずかしい」。こういう心配をされる学生さんは、とても多いです。
この記事では、面接で緊張してしまう学生さんに向けて、緊張とどう付き合えばよいか、緊張したままでも伝わるために何を準備すればよいかを、私が大学の講座でお伝えしている考え方でご紹介します。
面接で緊張してしまうのは、ダメなことですか
面接での緊張は、ダメなことではありません。緊張は、体が本番に向けて準備を整えたという合図です。ですから、緊張を無理に消そうとしなくてかまいません。大切なのは、緊張したままでも、相手の質問に誠実に答えられるように準備しておくことです。
私は採用する側の立場で、企業や公務の面接の進め方や、合否を判断する基準を一緒に作る仕事もしています。その立場から、はっきりお伝えできることがあります。面接で緊張してうまく話せなかったとしても、それだけで落ちるわけではありません。私が関わっている企業でも、人見知りの方が面接やグループディスカッションを通過しています。自分にできる範囲で、一生懸命に向き合ったからです。
なぜ、面接になるとこんなに緊張するのか
ドキドキは「セット完了」の状態
ストレスは、外から来る要求が自分の力を超える、あるいは超えるかもしれないと脳が判断したときに、心と体に起きる反応だと説明されます。面接は、まさにそういう場面です。
このとき心臓がドキドキするのは、ふだんとは違う出来事にすぐ対応できるよう、体が「用意」を整えているからです。私は講座で、これを「セット完了」の状態と呼んでいます。体はちゃんと、あなたを助けようとしてくれています。
このことを知っておくだけで、少し落ち着けます。ドキドキしてきたら、「よし、体の準備ができた」と心の中で言ってみてください。
顔が赤くなるのは、気持ちを込めている証拠
面接で顔が真っ赤になってしまう学生さんがいます。本人はとても恥ずかしく感じますが、面接をする側から見ると、それだけ気持ちを込めて来てくれている、ということでもあります。
棒読みになるのには、理由がある
面接で、覚えてきた文章を読み上げるような話し方(棒読み)になってしまう、という悩みもよく聞きます。これにも理由があります。
「当てられて話す」「目上の人がいる」「改まった場」。この3つがそろうと、人は子どもの頃の教室での音読と同じ状態になりやすいのです。面接は、この3つが全部そろう場です。ですから棒読みになってしまうのは、あなたの話す力が足りないからではありません。場の形がそうさせているのです。
ちなみに私自身も、大勢の前で話す仕事を長く続けていますが、いまでも講座の前は緊張して、食事が取れません。緊張は、慣れた人にも残るものです。
緊張したままでも伝わる、面接の前の準備
緊張をゼロにすることはできません。でも、緊張したままでも伝わる準備はできます。
1. 「話したいこと」ではなく「質問に答える」準備をする
面接は、自分が話したいことを発表する場ではなく、相手の質問に答える場です。覚えた文章を最初から最後まで言い切ろうとすると、途中で詰まったときに頭が真っ白になります。
準備するのは、文章の暗記ではなく、「この経験で、自分は何を考え、どう動いたか」という中身です。中身が自分の中にあれば、言葉が多少崩れても、もう一度言い直すことができます。
2. 話す前の設計図を持っておく
私は講座で、話す前に次の5つを考えておくことを勧めています。
| 考えること | 面接での中身 |
|---|---|
| 目的 | 「この人と一緒に働きたい」と思ってもらうこと |
| 相手 | 面接官。将来、一緒に働くかもしれない人 |
| 相手が知りたいこと | あなたの力や知識、そして人に向き合う姿勢 |
| 伝える中身 | 経験の中で、何を考え、なぜそう動いたか |
| 伝え方 | 結論から短く。聞かれたら付け足す |
この設計図があると、緊張して一瞬言葉が飛んでも、「目的は何だったか」「相手は何を知りたいのか」に戻ってこられます。
3. 想定問答を作り、声に出して練習する
生成AIを使って、志望する会社の面接で聞かれそうな質問と答えの練習を作るのも一つの方法です。ただし、AI が作った答えをそのまま覚えるのではなく、質問だけを借りて、答えは自分の経験から考えるようにしてください。面接では「具体的には」「なぜそうしたのですか」と深く聞かれます。そこに答えられるのは、自分で考えた中身だけです。
そして、必ず声に出して練習してください。泳ぎ方の本を畳の上でいくら読んでも、水に入らなければ泳げるようにはなりません。大学のキャリアセンターの模擬面接は、そのためにある場所です。
4. 面接は、会社説明会から始まっている
意外に思われるかもしれませんが、会社説明会も面接の一部です。話す側からは、学生さんの聞く姿勢がよく見えています。うなずきながら、メモを取りながら、少し前のめりで聞いている学生さんは、それだけで「人の話を聞ける人だ」という印象を残します。
その印象があれば、本番の面接で緊張してうまく話せなくても、「この人は緊張しやすい人なんだな」と受け止めてもらえます。うまく話す力よりも、一生懸命に聞く姿勢のほうが、社会ではコミュニケーションの力として評価されるのです。話すのが苦手な人ほど、説明会での聞き方を大切にしてください。
面接の当日、緊張したときにできること
面接官は「敵」ではなく「仲間」
面接官を、自分を落とそうとする敵だと思うと、緊張はどんどん強くなります。でも面接官は、入社すれば一緒に働く先輩や上司になるかもしれない人です。私は講座で、「向き合う相手は仲間」だとお伝えしています。
面接官が深く質問してくるのも、あなたを追い詰めるためではありません。話がうまい人だけを選んでしまわないように、その人が本当に何をしてきたのかを理解しようとしているのです。深く聞かれたら、「自分に興味を持ってもらえている」と受け止めてください。
上手に話すことより、敬意を持って向き合うこと
話すのが速い、滑舌が悪い、「えっと」が多い。こうしたことを気にしすぎると、かえって話せなくなります。言葉の上手さよりも大切なのは、相手に敬意を持って向き合うことです。
声が震えてもかまいません。涙が出てしまってもかまいません。一生懸命に向き合っていることは、ちゃんと伝わります。
頭が真っ白になったら、正直に言っていい
質問の途中で頭が真っ白になったら、黙り込むよりも、「緊張して少し言葉が飛んでしまいました。もう一度考えさせてください」と正直に伝えてかまいません。質問の意味が分からなければ、聞き返してもかまいません。面接は、お互いを知るための対話です。対話の中で聞き返すのは、失礼なことではありません。
相手に合わせてキャッチボールをする
面接官にもいろいろなタイプの人がいます。次々と質問してくる人には短めに答え、じっくり聞いてくれる人には少し付け足す。ボールを投げ合うように、相手の速さに合わせることを意識すると、自分の話す速さも落ち着いてきます。
緊張と、どう付き合っていけばいいか
緊張やストレスは、「慣れれば軽くなるもの」と「環境が合っていないサインかもしれないもの」に分けて考えることができます。
面接の前の緊張は、多くの場合、前者です。テストの前や初対面の人と会う前と同じで、その場限りのものであり、経験を重ねるほど軽くなっていきます。最初の面接でうまく話せなくても、落ち込みすぎなくて大丈夫です。
一方で、面接が終わって家でゆっくりしているときにも、その会社のことを思い出して胸がドキドキして苦しくなる、という場合は、少し立ち止まって考えてみてください。その会社や働き方が、あなたに合っていないのかもしれません。それはあなたが悪いのではなく、合わないだけです。
よくある質問
緊張しすぎて、面接に落ちてしまうのが怖いです
緊張してうまく話せなかったことだけを理由に、あなたを落とす会社ばかりではありません。面接で見られているのは、話の上手さよりも、経験の中で何を考え、どう動いてきたか、そして人に向き合う姿勢です。それでも、緊張しただけで「ダメだ」と判断する会社があったとしたら、その会社は、入社後も同じ見方であなたを評価するかもしれません。そういう会社とご縁がなかったことは、悪いことばかりではないと私は思います。
緊張しないための方法はありますか
緊張をゼロにする方法を探すより、緊張したままでも答えられる準備をするほうが近道です。ドキドキしてきたら「体の準備ができた合図だ」と考える、話す前の設計図を持っておく、声に出して練習しておく。この3つだけでも、当日の落ち着き方は変わります。
オンライン面接でも緊張します
オンラインの面接でも、対面と同じように、カメラはオンにして臨んでください。画面の向こうにいる相手も、あなたと同じように一人の人です。画面に映る自分の顔ではなく、相手の話に意識を向けると、少し緊張がやわらぎます。
まとめ――ドキドキしたままで、大丈夫
面接での緊張は、体が本番に向けて準備を整えた「セット完了」の合図です。顔が赤くなるのは気持ちを込めている証拠で、棒読みになってしまうのは場の形のせいです。緊張を消そうとするよりも、緊張したままでも伝わるように、「質問に答える」準備と、話す前の設計図、声に出す練習をしておきましょう。
そして当日は、面接官を仲間だと思って、敬意を持って向き合ってください。上手に話せなくても、一生懸命さは伝わります。
一人で抱え込まなくて大丈夫です。次の面接の前に、まずは大学のキャリアセンターで、模擬面接を1回申し込んでみてください。声に出して練習した1回が、本番のあなたを支えてくれます。
